01. エンジンとエグゾースト

エンジン
KTM 890 ADVENTURE Rに搭載されたエンジンは、パワーとトルクの大幅な向上をはじめ、様々なアップグレードが施され、圧倒的なパワーを生み出しています。電子制御とプリマフラーの改良により、厳しい排ガス規制をクリアしています。また低燃費を実現し、ロングツーリングに最適なモデルとなっています。


シリンダーヘッド
DOHCシリンダーヘッドには、ツインチェーン駆動のカムシャフトと、2つのスパークプラグ(各シリンダーに1つ)が含まれています。カムシャフトは組み立てられており、鍛造タイプのカムシャフトより軽量となっている一方、カム形状は特にトルクの高いエンジンを作成するように開発されています。1 mm大きくなったインテークおよびエグゾーストバルブ、さらに空気流を最大化するために流量最適化されたポートはピークパフォーマンスの提供をサポートします。カムシャフト間に位置するシリンダーヘッドのバランサーシャフトは新しくなり、向上したRPMと回転マスに匹敵する一方、ノッキング燃焼を検知し、より低いオクタン価を可能にするノックセンサーが装着されたため、世界中を旅する最適なバイクとなっています。


ピストン
プレーンコンロッドベアリングで接続された3つのピストンリングの付いた鍛造ボックスピストンはより軽くなり、ダイヤモンド・ライク・カーボン(DLC)ピストンピンを組み合わせることにより、ピストンの軽量化が実現され、往復重量を抑えられました。以前は1つのピストンに1つのジェットでしたが、現在ではそれが2つのジェットになり、ピストン冷却が充実しました。クランクシャフトの回転マスが20%向上したため、一定速度でのエンジン挙動が改善されました。さらに俊敏な乗車感覚を失うことなく安定したコーナリングが可能となっています。


ライドバイワイヤー
KTMのライドバイワイヤーシステムは電子的にライダーのスロットル操作を読み取り、スロットルバルブの位置を特定の走行状況に合わせて最適化します。


トランスミッション
6速のシーケンシャルトランスミッションは、シフトレバーの移動の短縮、スプリング動作の軽量化、Quickshifter+技術の迅速化によりシフト切り替えが速くなり、第4、第5、第6ギアの歯はガラスビーズ製のため信頼性が向上しました。Quickshifter+ はKTM 890 ADVENTURE Rのオプションであり、回転域全体でクラッチレスのアップダウンシフトが可能です。


PASCクラッチ
KTM 890 ADVENTURE R のパワーアシストクラッチ(PASC)には新たな摩擦プレートと冷却力の向上により、パワーとトルクが改善し、二重の役割を果たします。急激な減速時にリアホイールのハネ周りを防止するアンチホッピングクラッチは、ギアチェンジに必要な握力も減少させるため、少ない入力でクラッチを駆動でき、走行時の労力を減らします。


オイル循環
オイル循環は、コンパクトなセミドライサンプ方式を採用し、フリクションロスを最小限に抑えています。クランクケース、クラッチハウジング、ギアボックスから積極的にオイルを送り出し、エンジン内に不必要にオイルが流れることがないようにしています。オイルサンプは、2つのポンプ(掃気、圧力)および圧力調整バルブとともに、オイルポンプハウジングに統合されています。オイルを冷却するために、エンジンには大型のオイルクーラーが装備されています。


クランクケース
新たな水平スプリットクランクケースは、エンジンはボア径の拡大を可能としつつも、アルミニウム製の高圧鋳型のままとなっています。これにより、壁厚が減り、重量が削減され、表面が最適化されたため、エンジン設計者はより設計の自由度が高まります。オープンデッキシリンダーはクランクケースに統合されています。


クランクシャフト
回転質量が20%増加した鍛造ワンピースクランクは一定速度でのエンジン挙動を向上し、遠心力による干渉を低減しています。435度の点火順序から繰り出されるサウンドは、大型のLC8エンジンと似ており、スロットルを全開にすると、KTM 890 ADVENTURE Rは、1290 SUPER ADVENTUREモデルのようなフィーリングが得られます。


コンロッド
一新されたコンロッドには台形のV型トップエンドが使用され、振動マスを低下し、より高いエンジン始動特性とより高いモーターパワー出力をサポートしています。トップエンドベアリングにもダイヤモンド・ライク・カーボンのトップエンドの代わりにブロンズ製のコンロッドベアリングが装着され、製品寿命が向上しています。


バランサーシャフト
オフロードと舗装路を行き来する長時間の走行でも、クランクシャフト前とカムシャフトの間のシリンダーヘッドにバランサーシャフトを配置し、不快なエンジン振動を最小限に抑えています。


シリンダー
ニカジルコーティングされたアルミシリンダーは、スリーブレスエンジンのケーシングと一体化したものです。オープンデッキのシリンダー構造は、最適な冷却と生産公差の改善を可能にし、生産中のシリンダーの反りの可能性を低減します。シリンダー径は88mmから90.7mmに拡大し、排気量アップとロングストローク化を実現しました。


エグゾースト
KTM 890 ADVENTURE Rのエキゾーストシステムは、ステンレススチール製で最新のEuro5排ガス規制を満たすために、効率的な触媒コンバーターを備えたプリマフラーに改良が加えられているのが特徴です。マスの集中化に重点を置いた設計により、エグゾーストシステムの地上高も向上しています。


エアフィルター
KTM 890 ADVENTURE Rは、ライディング中に最も離れた場所に出かけても、エアフィルターの清掃や整備がしやすいように、簡単にアクセスできるようになっているのが特徴です。エアボックスはシート下に配置され、吸気口はバイクの後方にあります。これにより、エアフィルターへのアクセスが容易になっただけでなく、シートやタンクを低く抑え、足元の幅を狭くすることが可能になりました。また、電子機器の配置を工夫することで、質量を集中的に確保することも可能になりました。


冷却
極限のオフロード走行で重要なのは、LC8cエンジンが冷却を維持した状態で高度なパワーとパフォーマンスを発揮することです。KTM 890 ADVENTURE Rの設計と高度な冷却技術により、暑い条件下で数時間通して走行することに問題ありません。
