01. エンジンとエグゾースト

エンジン
95 hp(70 kW)というKTMの新世代LC8cインラインツインエンジンと最新の電子機器、そして6速シーケンシャルトランスミッションが合わさることで、トラベルエンデューロモーターサイクルに必要な点をすべて網羅し、オープンロードではガソリンスタンド間を最大450 km乗車することが可能です。2つのバランサーシャフトが振動を最小限に抑え、スムースな長距離移動が可能となりました。サービス間隔が15,000 kmと長距離のため、数日間通して走行するのに心配はいりません。


シリンダーヘッド
8バルブDOHCシリンダーヘッドには、ツインチェーン駆動のカムシャフトと、2つのスパークプラグ(各シリンダーに1つ)が含まれています。カムシャフトは組み立てられており、鍛造タイプのカムシャフトより軽量となっている一方、カム形状は特にトルクの高いエンジンを作成するように開発されています。鋼バルブは、ダイヤモンド・ライク・カーボンのロッカーアームによって解放され、カムチェーンの張りには油圧チェーンテンショナが使われています。


ピストン
プレーンコンロッドベアリングで接続された3つのピストンリングの付いた鍛造ピストンと、ダイヤモンド・ライク・カーボン(DLC)ピストンピンを組み合わせることにより、ピストンの軽量化が実現され、往復重量を抑えられました。これにより、エンジンに回転が速くなり、クランクシャフトは軽量化され、回転質量が低減し、ハンドリングが向上しました。


ライドバイワイヤー
KTMのライドバイワイヤーシステムは電子的にライダーのスロットル操作を読み取り、スロットルバルブの位置を特定の走行状況に合わせて最適化します。


バランサーシャフト
オフロード区間と大きなタールマカダムステージを繋いで、サドルに座って長い時間走るとき、不快なエンジンの振動が2つのバランサーシャフト(1つはクランクシャフトの前面、もう1つは2つのカムシャフトの間のシリンダーヘッド)によって最小限に抑えられます。


シリンダー
ニカジルめっきアルミニウムシリンダーは、スリーブレスエンジンキャスティングの一体部分です。このオープンデッキシリンダー構造により、最適な冷却が実現され、製造のばらつきと信頼性が改善されており、製造時にシリンダーに反りが発生する可能性を抑えます。


コンロッド
高品質なピストンは、滑り軸受で作動する鍛造ピストンでクランクシャフトに接続されています。


クランクシャフト
ワンピースの鍛造クランクシャフトは、75度のオフセットでプレーンベアリングによりしっかりと固定されています。435度の点火順序から繰り出されるサウンドは、大型のLC8エンジンと似ており、スロットルを全開にすると、KTM 790 ADVENTUREは、VツインADVENTURE兄弟モデルのようなフィーリングが得られます。


クランクケース
水平に分割されたクランクケースは、アルミニウムが高圧鋳造されたものです。これにより、壁厚が減り、重量が削減され、表面が最適化されたため、エンジン設計者はより設計の自由度が高まります。オープンデッキシリンダーはクランクケースに統合されています。


オイル循環
オイル循環は、コンパクトなセミドライサンプシステムを採用し、摩擦によるロスを最小気にしています。オイルはクランクケース、クラッチ筐体およびトランスミッションからアクティブに送り出されることで、オイルがエンジンに不要に流入しないようにしています。オイルサンプは、2つのポンプ(1つは排油、もう1つは圧力)および圧力制御バルブと共にクランクケースに統合されています。オイルを冷却するために、エンジンにはより大型のLC8 Vツインエンジンと同等のオイルクーラーが装備されています。


PASCクラッチ
PASC (Power Assist Clutch)を操作するために、ライダーは最小限の入力が必要です。LC8cのアンチホッピングクラッチはLC8のものと同様ですが、よりコンパクトなため軽量です。これにより、急激なブレーキングや減速時にリアホイールがハネ回って不安定になるのを防ぎます。また、ギアチェンジに必要な握力を減少させ、指1本でクラッチが操作できるようにし、走行時の労力を減らします。


トランスミッション
6速シーケンシャルトランスミッションのスタック構成によりエンジンの長さが抑えられ、よりコンパクトになりました。ギアシフトは非常にスムースで、オプションのクラッチレスアップ・ダウンシフト、Quickshifter+を使うと簡単に実行できます。


エグゾースト
ステンレススチール製のエグゾーストシステムは、ミッドエグゾーストサウンドダンパーを使うことで重量を集中化したため、マフラーが比較的小型になり、エグゾーストシステムの地上高が最大化されました。この音はアドベンチャーの始まりです!


エアフィルター
新しいKTM 790 ADVENTUREは、ライドで隔絶された場所を走るときでも、簡単にエアフィルターにアクセスして掃除やメンテナンスを行うことができます。エアボックスはシート下に配置され、インテークはバイクの後部にあります。これはエアフィルターへのアクセスが容易なことに加え、シートとタンクを低位置に配置できたため、バイクを重要な部分であるレッグエリアで細くなるように設計できました。また、これにより電子機器の位置を改善でき、重量を集中化させることが可能になりました。


冷却
レースが過熱する中で、重要なのはLC8cエンジンが冷却を維持した状態で高度なパワーとパフォーマンスを発揮することです。KTM 790 ADVENTUREの設計と高度な冷却技術により、暑い条件下で数時間通して走行することが可能となりました。
