2026年EnduroGP完全制覇を生んだ、細部の進化

今年のエンデューロで、新たな基準が打ち立てられた。Red Bull KTMは、ジョセップ・ガルシアとアンドレア・ヴェローナという2人のライダー、そしてKTM 250 EXC-FとKTM 450 EXC-Fによって、EnduroGP、Enduro1、Enduro2という3つのタイトルを獲得。その成功を支えた秘密の一端を紹介しよう。

文:Adam Wheeler|写真:Future7Media

圧倒的なシーズンを支えた立役者たち。ジョセップ・ガルシアとアンドレア・ヴェローナが、Red Bull KTMを成功へと導いた。

KTMがエンデューロで築いてきた長く輝かしい歴史。その記録に、2026年、新たな鮮烈な1ページが加わった。

EnduroGPを知らない人のために説明すると、これはオフロードライディングのさまざまな要素を凝縮した、極めて総合的な競技だ。高速のモトクロスセクション、岩場や水場のテクニカルな障害、変化に富んだ路面、ヒルクライム、トライアルさながらの正確さ、そして肉体的な持久力が要求されるステージが組み合わされ、そのすべてが100分の1秒単位で計測される。

ライダーはもちろん、マシンにも高いレスポンスと総合力が求められ、あらゆる状況に対応できなければならない。

Red Bull KTMには、卓越したエンデューロライダーがそろっている。スペインのスター、ジョセップ・ガルシアは、KTM 250 EXC-FでEnduroGPタイトルを3年連続で獲得。これがキャリア通算9個目のタイトルとなり、Enduro1では4連覇を達成した。

一方、アンドレア・ヴェローナも、KTM 450 EXC-Fを駆ってEnduro2を制し、通算9個目のエンデューロタイトルを手にした。しかし、どちらのタイトル獲得も、決して楽な道のりではなかった。

ガルシアは、シーズン最後から2戦目となるフランスGPで、わずか1秒差という僅差でチャンピオンを示すゴールドプレートを確定させた。

一方のヴェローナは、イタリア、スペイン、フィンランド、ポルトガル、フランス、そしてウェールズを巡ったシーズンの最終戦、その最後の数分まで戦い抜かなければならなかった。

「ポイント差はわずか1ポイントで、最終日の勝者がチャンピオンになる状況でした」と、ヴェローナは振り返る。

「日曜日にすべてが懸かっていることは分かっていました。良い結果を出せると自分に言い聞かせました。落ち着いていたし、自信もありました。ただ、厳しいコンディションの中では、決して簡単ではありません。大きなミスをせず、可能な限り速く走ることを心がけました」

シーズンの行方を決定づける重要な局面を走るアンドレア・ヴェローナ。

Red Bull KTMが同じ年にE1とE2の両タイトルを獲得したのは、実に20年ぶりのことだった。

チームマネージャーのファビオ・ファリオーリは、20年以上にわたってエンデューロ世界選手権の活動を率いてきた。イタリア出身の彼は、家族代々エンデューロと深い関わりを持ち、KTMのエンデューロ史を彩ってきた多くのビッグネームと仕事をしてきた人物でもある。

また、最新世代のKTM EXC-Fをレース仕様に仕上げる役割も担っている。市販モデルは、その高いパフォーマンスと競技を見据えた緻密な設計思想によって、すでに高い評価を獲得している。

KTM 250 EXC-FとKTM 450 EXC-Fは、エンデューロラインアップを構成する8モデルのうちの2台だ。なお、この8モデルにHARDENDUROおよび6DAYSエディションは含まれていない。ラインアップには、高度なTBI燃料噴射技術を搭載した4台の2ストロークモデルも含まれている。

「ベースとなるマシンが非常に優れていたので、そこからいくつかの部分を最適化していきました」

ファリオーリは、シーズン前のテストについてそう語る。

トップレベルの競技が要求する過酷さに対応するため、ファリオーリとチームは、耐久性の向上や軽量化を目的として、わずかなコンポーネントを交換している。しかし、作業の大部分を占めるのは、KTM 250 EXC-FとKTM 450 EXC-Fを、ガルシアとヴェローナそれぞれのライディングスタイルや好みに合わせて細かく仕立てることだ。

KTM 250 EXC-FとKTM 450 EXC-Fは、ジョセップ・ガルシアとアンドレア・ヴェローナ、それぞれの独自のライディングスタイルに合わせて調整された。

「最も重要なのはサスペンションです。それに加えて、オーストリアから供給される内部パーツを使用し、エンジンにも手を加えています」と、ファリオーリは明かす。

KTM 250 EXC-Fは、より高回転域までハードに使われるため、レース開発において重点的な対応が必要になる。

「250は、いわばさらに“ファクトリー仕様”です。市販車とは異なるエンジンパーツが数多く使われています。一方、450はもともとのベースが非常に優れているため、大きな変更は加えていません」

「マッピングとインジェクションシステムには多くの時間を費やします。ここは市販仕様とはかなり異なり、テスト後のアンドレアの要望に応じて調整されています。最終的には、状況に合わせて選択できる一定の調整幅を作り上げます」

「フレームにも小さなアップデートを施しています。しかし、私たちが最も力を注ぐのはサスペンションです。ライダーごとに求めるものが違いますから」

「アンドレアのために、フロントとリアの車高やマシン全体のバランスについて、さまざまな解決策を試しました。最終的には2〜3種類のセッティングを用意しました。ある仕様のほうが彼に合う場合もありましたが、それもコースによって変わります」

ガルシアの2026年シーズン前の準備は、肩の脱臼によって中断を余儀なくされていた。この事実は、ガルシア本人とチームによって公表されていなかった。

そのため、彼は慎重かつ冷静にシーズンへ入る必要があった。

「目標を達成できたのは幸運でした。でも、ケガから巻き返すことには慣れていますからね!」

そう笑ったガルシアは、最終的に全戦で表彰台に上がるという、驚異的なシーズンを築き上げた。

ジョセップ・ガルシアは、その強い意志と安定した走りによって困難を乗り越え、再び傑出したエンデューロシーズンを実現した。

「ジョセップは、あらゆることを非常によく分析します。そして、彼のスピードは信じられないほどです」と、ファリオーリは評する。

「いったん方向性が決まれば、あとはスピード、自分自身、そしてライディングだけに集中します」

「シーズン中にそれ以上いろいろなものを試す必要がない。それが彼の特別なところです。彼は本当に貪欲です。ひとたびゴーグルを着ければ、良い意味で容赦のない男になります!」

EXC-Fをレース仕様に仕立てる作業は、その大半がオフシーズンに行われる。

「とはいえ、マシンを根本から別物に変えてしまうようなチューニングではありません」と、ファリオーリは強調する。

「通常、レースごとに多くの変更を加えることはありません」と、ヴェローナも話す。

「冬の間、あるいはシーズン前に、どんな場所でも良好に機能するマシンを作るため、最適な妥協点を見つけます。その後はライダーである自分が、それぞれ異なるコンディションに適応しなければなりません」

ヴェローナは、2026年シーズンを迎えた時点でも、自身のセッティングに完全な確信を持てていなかった。そのため、通常以上のテストが必要になった。

「テスト日はかなりハードになることがあります。自分が何を感じているのかを理解し、正しい方向性を見つけるために、長い時間走り込みます」

「走っているときに感じたことを、可能な限り正確に伝えなければなりません。そして、メカニックや技術開発スタッフが、その感覚を数値や異なる部品、マシンの具体的な変更へと落とし込んでいきます」

「感覚を現実の形に変える作業です。これは決して簡単ではありません。また、技術開発スタッフにも、最善の対応を導き出すための経験が必要です」

アンドレア・ヴェローナにとって、成功はテストから始まる。完璧なセッティングを見つけるため、あらゆるディテールを細かく調整していく。

WPの協力を得て、さらにサスペンションの調整を重ねた結果、アンドレアはウェールズでの緊迫した最終局面を制し、タイトルを獲得することができた。

「精神面で、彼は一段階上のレベルに到達していました」と、ファリオーリは振り返る。

「このチャンピオン獲得は、これから何年も私たちの記憶に残るでしょう!」

Red Bull KTMは、MotoGP、MXGP、AMA SMX、ラリー、そして米国のオフロードレースなど、幅広いカテゴリーで高い競争力を発揮している。しかし、エンデューロはKTMという企業を形作る原点のひとつだ。

FIM EnduroGPは、シリーズの認知度を高め、グランプリウイナーとマシンが持つ驚異的な万能性を示すためのフォーマットを、ようやく確立しつつあるように見える。

「エンデューロは毎年、規模も内容も大きく、良くなっています。ただ、このスポーツをさらに発展させるために、まだ改善できることはあります」と、ガルシアは語る。

トレイルを走るライダーと、ピットで支えるチーム。その両方に最高の才能と道具を備えたKTMは、これからもエンデューロの最前線を走り続ける。

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